一日だけ回答の期間を貰った。が、あまり断われない話だとは感じた。それに、悪くない話だとも思う。ではなぜすぐに回答しなかったか?…
「佐藤君…。話しぶりからまさかとは思ったが、小林先生が亡くなられたことを知らないのか?」「!?」今度は言葉は理解できたが、思考がついていかない。小林陸が亡くなった…
「…くん。」
「…」
目的の建物は大学の敷地の中ほどよりやや南に位置する。バスは敷地の中を8の字に走るため、敷地中央のバス停は2回通ることになる。…
9時55分。この時間に来ると、ちょうど学内周遊バスが正門から出る。二限目の講義に合わせて学内の各施設に万遍なくアクセスできるので非常に便利だ。もちろんバスの時間に合えばの話だが。…
9時12分。いつものペースでゆっくりとカップを空にするとちょうど店を出る予定の時間だ。店から駅まではすぐ近くだ。歩数を数えても大した数ではないだろう。数えたことはないが。…
研究者の朝はそれほど早くない。大学の研究者ともなると尚更だ。教授クラスにでもなれば話は別なのだろうが。…
部屋の扉からノック音がした。「おーい、いるか?」内藤だ。同じ大学で働く教員であり、学生の頃からの腐れ縁というやつである。気を取り直して、すぐに返事をする。「どうぞ。」…
足を揺すると服の擦れる音がする。その音のみが部屋に響く。その部屋の主は椅子の上でパソコンの画面を眺めていた。「先を越されたか…。」悔しさとも安堵とも取れる感情が混じった声が出る。…