二人の研究者(仮)#11

研究背景#5

はやし まさし
color pencils

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「…くん。」

「…」

「佐藤くん。」

呼ばれている気がするが返事ができない。

「佐藤くん!」
「!」
「一体どうしたんだね?」竹内先生だ。
「あ、いや、…なんでもありません。」
立ったまま、少し意識を失っていたようだ。
「大丈夫か?」
「はい。ですが―」
「というわけで、ふたりともぜひ検討してもらいたい。」
先ほどの話に反論するため言葉を続けようとして、遮られた。
「わかりました。」
わかりましたじゃない。なぜ自らイスを譲ることを検討しなければならないのか…
…検討?
「え、決定ではなくてですか?」拍子抜けした声が出てしまった。
少し間があいた。
二人は心配そうに、いや不思議そうにこちらを見ている。
「何を言っているんだ?」
「話が噛み合ってないね…。先ほどから何をそんなに反発しているんだ?」
当たり前だろう!とまた語気が上がりそうなのを堪えた。
「小林先生をこの研究室に迎えて、いずれは大きな研究グループを立ち上げる。そのため春から研究室を明け渡して、さらにサポートをしてくれと言われたら、その後は私はもうクビなのかと容易に想像できますよ。当然反発します。」
早口に言う。

専攻長がワハハと声を上げて笑う。
「佐藤くんは想像力が豊かすぎるなぁ。今後も研究成果が期待できそうで何よりだ。」
「…! なにをおっしゃって―」
「私が言っているのは、小林陸先生の弟子を君たちの研究室に迎えたいということだよ。」
「…弟子?」
「そう。弟子。先ほども言ったが例の研究にも関わっているらしい。といっても企業の研究員だからはっきりとした師弟関係ではないと思うが、亡くなるまで二年ほど小林先生の下で働いていたそうだ。」
「なくなる?」
意味が不明な単語が出て、疑問が言葉に出る。
二人は少し驚いた様子でこちらを見る。
「佐藤君…。話しぶりからまさかとは思ったが、小林先生が亡くなられたことを知らないのか?」
「!?」

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